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―――とある教会の一室 ベッド、窓の脇には簡素な机とイス、壁際に書棚といったごくありふれた部屋だ。 床にはまだダンボール箱がいくつか置いてある所からみて、部屋に越してきたのか、 あるいは、この部屋の主は片付けが苦手なのか。 スペースの空いた書棚や、物の少ない机から推測して、恐らく前者なのだろう。 その机の上には今、これまた簡素な小さな木箱と、便箋が広げられていた。 紙の状態から数年―もしかしたら桁が一つ増えるかもしれない―前の物だと解る。つまり、今現在の物ではないということだ。 ところで、この部屋の主はどうしたかというと、ベッドに腰掛け俯いていたりする。 足元には銀色のトランク、手には小さな瓶。中には白い粉末。 その手は大きく、支える腕もまた丸太の如く太い。 Yシャツから覗く胸板もこれまた厚く、太い首の上にある顔も大きく岩を掘り出したようだ。その中で、目だけは小さく、見ようによっては小動物の様に見えなくも無い……目だけ。 そんな巨人の様な男が、俯いているのである。 まるで、万引き犯が事務所で問い詰められているかのように! 一応、言っておくが、万引きはしたこともないし、しようとも思わない。 では、何故そうなっているのか?今回はその話をしようか。 スティノークルがゼロへと繋がる話を――― 今日までの誕生花 (12月01日) 蓬菊[よもぎぎく] Tansy 平和 蓬[よもぎ] Mugwort 決して離れない 蝦蛄葉仙人掌[しゃこばさぼてん] Christmas cactus 一時の美 (12月02日) 苔[こけ] Moss 母性愛 シネラリア(サイネリア,富貴菊[ふうきぎく]) Cineraria 常に快活 ヘリコニア(鸚鵡花[おうむばな]) Heliconias 風変りな人 (12月03日) ラベンダー Lavendar 期待 ベラドンナ Belladonna lily 沈黙 ポインセチア<赤>(猩々木[しょうじょうぼ])) Poinsettia 祝福する (12月04日) 酸葉[すい]) Rumex 情愛 コリアンダー(香菜) Coriander 辛辣 カンガルーポー Kangaroo paw 分別 (12月05日) アンブローシア Ambrosia 幸せな恋 カラー(オランダ海芋) Calla 熱意 磯寒菊[いそかんぎく] Aster pesudo-asa-grayi(学名) 智慧 (12月06日) 雪の下[ゆきのした] Saxifraga 切実な愛 カトレア Cattleya 真の魅力 ピラカンサ<実> Firethorn 愛嬌 (12月07日) 井の元草[いのもとそう] Fern 信頼 ラナケリア Cape cawslips 変化 柊[ひいらぎ] False holly 用心深さ
その日も部屋を『自分の部屋』として、機能させる為に作業をしていた。 「だいぶ部屋らしくなってきたなぁ~。もう少ししたら泊まれますかねっと」 荷物整理をする為に、愛用のトランクを開けた時、ソレが目に留まる。 何の装飾もなく、ただただ施錠しただけの簡素な木箱 耳を澄ますと、外の廊下やら隣の部屋から、掃除をしたり休憩したりと様々な 『仲間達』の声が聞こえる。 「……今なら、出来るやもしれんな……」 ―――その夜、蓋を開けた――― 机の上に便箋を広げ、内容を確認する。 そして、箱から小瓶を取り出し、ベッドへと腰を下ろして深呼吸……。 意識をまどろみの中へと追いやるようにしつつ、精神は研ぎ澄ます。 思い出すように、懐かしむように、忌むように紡ぐ、言葉を。 ―――人は誰しもペルソナ(仮面)を被っている。それは、表情・性格・人格・精神・心・記憶、はては魂までをも隠す
別にそれは悪い事ではないだろう。しかし、時にはその仮面をはずす必要がある。 私にとってそれは、今なのかもしれない。
外して見ようか。記憶のペルソナを―― 「Es last frei,Verbindung(解放、接続)」 ………… …… … 「来るな……やめて……それ以上、 さないで!」 ――― きろ― 誰かが呼んでいるような気がする。でも、一体誰が?
「――起きろって、言ってんだろうがー!」
瞬間、身体が浮遊感に襲われる。まるで放り投げられたかの様な。 ――否、様ではなく放り投げられていた。軽く上空3mくらいの高さに。 しかし、ただ投げられてるわけではない、空中で受身を取ろうと身を捩ろうと……出来なかった。 ドサッ、ゴロゴロゴロ…… 受身を取れず、思いっきり地面に落下した衝撃で、曇った思考もクリアになる。 まぁ、目が覚めたともいう。 「やれやれ、ようやくお目覚めかい?もう少し、寝起きはよくないと、命を落とすぞ?」 と、のたまう声の主の手にはロープが握られている。目でロープを辿ると…… 少年の胴体と腕を一つにしていた。――受身が取れないわけである。 「もう少し、優しく起こしてくれてもいいと思うんだけど」 と、少年は目の前に立つ男に言った。 ここはどこかの森の中。どこなのか正確な場所は解らない。だから、『どこか』 この、前に立つ男なら知ってるのかもしれないが。 男とはいつだったか数年前に、ふらっと現れて食料を分けて貰った時から、何故だか一緒だ。なんでついてくるの?と、尋ねた事があったが、『おまえが着いて来るんだろ?』と、言われた。 「……また、うなされてたぞ」 幾分、低い声で男は言った。 「…………」 「まだ考えてるのか。まぁ、考え悩む事が悪いとは思わないが、過ぎはどうかと思うぞ」 と、男に言われ、少年は問う 「じぁあ、どうしたらいい?」
「今、いや、今までか。悩んで考えてもでないほどの事なら、それはおまえにとって人生規模の問題なんだろう。なら、すぐに答えを出そうとしなくていいんじゃないか?」 「そう簡単に答えがでたとか、解ったとかいうのは、抱えてるモノが小さい時の話だ。モノが大きいなら抱えたまま進めばいいんだよ」 真剣に聞きながらも、疑問は晴れない。だから、問う。 「その大きなモノは、いつ答えをだすの?」 少し考えるような素振りを見せた後、 「それは俺にもわからない……が、おまえはまだまだ未熟だ。旅をしてきて世の中の事は少し解ったかもしれねぇが、人の心、魂のことを全然知らない。無論自身のもだが、もっと大切なのは他人のだぞ」
胸に拳を叩きつけながら
――仲間を、信頼できる友を作れ。出来たと思ったら、これを開けろ―― そこで、映像は途切れた。ノイズの砂嵐が目から耳から頭に流れ込む。
その中で、【今の私】は【過去の私】に問われる。 『仲間は出来た?』
「ああ、出来たよ」
『信頼できる?』
「そりゃあ、もう」
『じぁあ……答えは見つかった?』
「……いや。まだ……ですが、色々と解ったことはある」
声は、更に問う 『なら、コレが齎す意味は、出るよね』 差し出される手には小さな瓶。 ―――ノイズが消える。思考の時間は終わりだ。次は行動の時間――― 「――emitam(解放)」 術式から、夢から覚めた私は、垂れた頭を持ち上げる。 ポキポキと首がなった。 結構な時間、こうしていたようだ。 「さて、夜も深まり、いい時間ですな。やってみますかね」 黒のコートを着て、左手には銀色のトランクを提げ、静かに歩を進める。 昼間の仲間達の気配が、温もりが残る教会を背に満月の夜を歩く。 右手をコートのポケットに突っ込む、そこには――白い粉の入った小瓶が握られていた。 ゼロ編・前半終了 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後半と前半一気にお送りしようかと思ったのですが、思いのほか長くなったので 前後編と相成りました。 スティノークルに関するこういう過去とか設定の話は、初?かもしれない。 今後も、機会あるごとに書いていこうと思うので、拙い文ですが宜しくお願いします。
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