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2008 12,31 21:53 |
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どのくらい歩いただろうか。
まだ月の位置は高い。夜明けまでには時間はあるだろう。 鬱蒼と茂る森の中を黙々と歩き続ける。 2mはあろうかという長身に、いかつい体躯。 それを全身漆黒のコートが包んでいる。 左手には、小さな子供なら入れそうな大きさの銀色のトランク。 そんな格好の男が歩いているのだ。真夜中の暗闇の中を。 小さな子供や常識的な一般市民が見たら、泣かれた挙句に通報されかねない。 ……が、ここは深夜の森の中。逆にその様な普通の人がいる方が珍しい。 この男の名は、スティノークル。 これでも、高校生だ。信じられないと、初見の人はいうだろう。だが本当。 では、何故その高校生がこんな深夜に森の中を歩いているのか? 詳しく話せば長くなるので、手短に。 彼は『能力者』と、呼ばれる異能の力を持った人間。 通う学園は、その『能力者』が集まり生活する所なのだ。 そして、彼は『魔術師』でもある。 一通の便箋をきっかけに、とある事を確かめる為に歩いているのである。 ―――道が開けた。 教会を出てから、歩くこと数時間。 ようやく着いた様だ。 あたりを見回すと、木々は一切なくなった代わりに、膝の高さ程の雑草が広がる。 広さは学校の教室程度だろうか。奥は切り立った崖になっている様だ。 これで、雑草の間に花でも咲いていれば、絵になったかもしれない。 が、花の変わりに雑草に隠れるように、石造りの何かが点々と、見える。 近づいて見ると、どうやら何かが崩れた後の様な感じがする。 まるで、石造りの建物が壊れ朽ち果てた荒野の様な――― 今日の誕生花 (12月30日) 臘梅,蝋梅 Carolina Allspice 慈愛 茴芹(アニス) Anise 活力 口紅水仙(ポエティカス) Narcissus すてきな装い (12月31日) 檜[ひのき] Chamaecyparis 不滅 オリーブ Olive 平和 ユーリオプスデージー Gray-leaved euryops 円満な関係 場所の確認、地形の状態を確かめ終わった私は、意識を集中させる。 丁度、この場所の中心付近に来た辺りから、周辺の空気が変わった。 何と言ったらいいのか。そう、ゴーストタウンに入った時の様な……。 「……さて、何が起きるのやら……」 イグニッションを済ませ、コートのポケットから小瓶を取り出す。 便箋と共に入っていた、小瓶。中には何かは判らない白い粉。 瓶の蓋を開け、蓋を傾ける。 サラサラサラ……――― 風に乗り辺りに舞い散る白い粉。 瓶に蓋をして、コートに仕舞う。 「…………おや?」 一瞬、瘴気(とでも呼んで置こう)が、濃くなった感じはしたが……。 何も起こらない。 何も感じない。 流れるは夜風のみ。 月が流れる雲に隠れ、月明かりが途切れる。 ―――待て。待て待て待て。 何も感じないだって? そいつぁ~おかしくないか? さっきまで、周囲を漂っていた瘴気はどうした? 粉が舞った時、濃くならなかったか? それが、まったく無いなんて、おか――― ヒュン 「なっ……!!」 風を切る音と共に、瞬時に全身を巡る死の感覚。 上半身と下半身が、分かたれるイメージ。 しかし、そこは能力者。イメージが成立する直前に、前へ倒れる。 肉を裂かれる感覚を背に感じつつ、前転から反転して、『ソレ』を見上げる。 風が吹き、雲が流れ、月明かりが戻る。 刃に赤い血を滑らかせ、佇む影一つ。 風に棚引く裾は、所々やぶれ、穴が開いている。 ローブの様にも見える、フード付きの衣装。 白い手が持つは、血塗れる大鎌。 フードの中は……白い髑髏……まさに、死神! 「こ、これは一体……何故こんな所に!?」 驚愕の声を上げるスティノークル。 ――無理も無い。何故なら、学園に集う能力者の中で、眼前にある姿は幾度となく 見るからだ。使役ゴーストと呼ばれる部類。その一種スケルトン系の中でも、高Lv に位置する存在。それが――― 「スカルロード……」 呟くと同時に、今まで感じなかった圧倒的なまでの存在感を放ち、襲い来るロード。 トランクを地面に落とし、中から飛び出すスパナを掴み取る、スティノークル。 繰り出される鎌による斬撃を、時には避け、時にはスパナで受け止める。 「(考えろ、何故突如現れたのか)」 初撃による、背中の傷もあり、防戦一方のスティノークル。 一瞬でも判断を誤れば、致命傷へとなりうる攻撃を凌ぎつつ、考える。 周囲を漂っていた瘴気、白い粉、反応するように濃くなる瘴気、 瞬時にして消えうせた瘴気の感覚、現れたスカルロード……。 スカルロードは使役とはいえ、ゴースト。それが反応するモノ。 「まさか…残留思念…ならば!」 鎌の一撃をバックステップで間合いを外し、懐から詠唱銀を取り出し、 投げつける!煌く詠唱銀の中を突っ込んでくる、スカルロード! これ以上は、崖があり下がる事は出来ない。ならば、受け止めるまで。 「ふんっ!」 横へも逃がさないと、左側から迫り繰り出される大鎌の横薙ぎを、 両手のスパナで受けつつ、右前方―つまりスカルロードが鎌を振りぬく方向― へ向かって、跳躍する。 鎌の流れる力に乗って、スカルロードの横を通り過ぎる刹那……。 頭に響く耳鳴り、脳に直接流れ込んで来るような光の奔流。 呼び起こされる、記憶。それは―閉ざされた過去の、始まりの― ……罪の断片。 ………… ……… …… 燃え盛る炎、崩れ落ちる建物、響く男の…断末魔…。 辺りには倒れ伏す骸の数々、地縛霊やリビングデット、妖獣といったゴースト達。 「ああ、次は私の番。これも報いなのかしらね……」 視界には、炎に包まれ、雷光の如き一撃により切り裂かれる妖獣。 そして、次の獲物を探しているのか、辺りをゆっくりと見回す黒い影。 その目が、こちらを向き、体もこちらを向く。 「今更、家系とか血族とか……何になるというの?そんなの、私達の自己満足。 力が無かったからって、私達で終わらせるべきだったのよ」 と、嘆く私に向かって、放たれる炎。 「きゃああああぁぁぁ…熱い…痛い!」 魔力の炎に体を焼かれる中、迫る黒い影。 ぞぶっ 胸を貫く黒い腕。 死ぬ行く前に、目に焼き付ける。 「ごめ…ん…な…さい…。……ラグ……スティ…ノ…クル…愛しの……子…」 目の前の影を抱きしめ、事切れる体。 女に倒れ掛かられた、黒い影……少年は、無造作に骸を振り払い。 次の獲物へと駆け出した。 ―――― ――― ―― 「つっ、今のは……」 頭を振り、痛みを振り払う。 振り向くスカルロード。 「……そういうこと、か。あなたは私の……。受け入れましょう……」 目を閉じ、見開く。迫り来るスカルロードの姿を。 振り下ろされる死神の鎌。 スティノークルの体を袈裟斬りにする直前、ロードの体内から呪いの力が爆発する。 呪いの魔眼の威力で、軌道の逸れた鎌は地に突き刺さり、 動きの止まったスカルロードに、スティノークルは片膝を付き、 「其は力、其は罪、我ここに示す。魂の形を。汝、ここに結ばん。魂の誓約を」 ―――spiritual covenant――― スカルロードの魂と共鳴、共有、語りかけた時、契約は―誓約は―履行される。 鎌を地面に刺して立つ、スカルロード。 片膝を付いて見上げる、スティノークル。 スティノークルは再度、詠唱銀を取り出し、パラパラと落とした。 反応しあうかの様に、足元から消えていくスカルロード。 消え行くスカルロードの後ろから、朝の日が輝き始める。 「……ふぅ、帰りますかね」 黒燐奏甲で傷を癒し、イグニッションを解く。朝日を背に受け、帰るのだった。 ………… ……… …… ―――とある教会の一室 ベッド、窓の脇には簡素な机とイス、壁際に書棚といったごくありふれた部屋だ。 机の上には今、簡素な小さな木箱と、便箋が広げられていた。 部屋の主はベッドに腰掛、頭を垂れている。 右手には小さな小瓶。左手にはイグニッションカード。 今、その瓶は空になっている。 不意に頭が上がる。 「ん……少し、寝てしまったようですなぁ~。ふぅ、心地よい風だ」 両手を上に、思いっきり伸びをする。 「こうやって、はっきりしていくんですかね。少しずつ」 イグニッションカードを見つめながら、呟く。 そのカードには、男の他に死神が一体、描かれていた。 「おーい、こっちの掃除、手伝ってくれ!」 扉の外から声が響く。 「おっと、戻らないと怒られてしまいますな」 ベッドから立ち上がり、扉へと向かう。 一人では及ばない事も、信頼できる仲間と一緒なら、乗り越えていける。 今はもう、一人ではないのだから。 ゼロ編・後半終了 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます。 はい、というわけで、ゼロ編後半をお送りしました。 間が空いてしまい。申し訳ないです。 そして、長くてすみません!? PR |
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